THE CREAM 製作秘話
発売から約9年、多くの方にご支持をいただいているBrift H自慢のオリジナルクリーム。誕生のきっかけから完成までをご紹介します。あなたの愛靴にもぜひ最高のご飯(クリーム)を。
今から約9年前、2014年にBrift Hオリジナルクリームを発売しました。それまでは海外メーカーのクリームを中心に使っていましたが、どうしても自分自身が靴磨きで表現したい輝きや革のうるおいが出せずいつかはオリジナルのクリームを作りたいと思っていました。
時間は遡り自分がまだ靴磨きを始めた頃、靴磨きの勉強をするためにあちこちに足を運んではいろんなお話を聞いたり見たりしている時期がありました。そこで知り合った某靴クリーム会社を引退されたベテランの職人さんが言った一言が今のTHE CREAMの製作のきっかけになりました。
「化粧品会社が靴クリーム作ったらすごいのができるんだよ。靴クリーム会社と違って良い原材料をいっぱい持っているからね。本気になったら最高のクリームを作れると思うよ、でも靴クリームって化粧品と違ってすぐに使い終わらないから市場が小さいんだよ、だからなかなか実現は難しいんだけどね。」
ほ〜!確かに!!!であれば自分が靴クリーム作る時は絶対化粧品会社にお願いしよう!とこの時に心に決めました。そして常に頭の片隅にその言葉を置きながら靴磨きの技術を高め、店を開き、自分の靴磨きもかなり形になってきた頃(2011年くらい)にそろそろオリジナルクリームを作りたいな〜と真剣に検討し始めたそんなある日、うちをよく利用してくれる化粧品会社の社長さんと世間話をしている時、「化粧品会社で靴クリーム作ったらすごいのできるって聞いたんですけど、そんなことって可能ですか?」と聞いたところ「え〜!それめっちゃ面白いやん!やりましょう!」って感じでバリバリの関西弁でご快諾いただき、あれよあれよとオリジナルクリーム開発が始まりました。
この時の出逢いとタイミング、社長のノリの良さがなかったらTHE CREAMは生まれてなかったな〜と思います。小さな靴磨き屋が注文するのでロットも少なく決して儲からないであろうこの企画が実現したのはある意味奇跡だと思っています。
ところで、当時メインで使っていたのはフランス製の“SAPHIR”とドイツ製の“COLONILL”でした。どちらも素晴らしいクリームでそれぞれ特徴の全く違う使用感と仕上がりが出るので靴に合わせて使い分けていました。“SAPHIR”はオイリーでこってりしたクリームなので重いツヤを出したり補色には素晴らしいクリームでした。ただ少しベタつきが強く、また顔料も多いので革の目を隠して本来の革の表情を消してしまう特性があったのでそこが気になっていました。
“COLONILL”はとても柔らかく伸びも良いので使い心地が抜群。塗った後は艶も出るし革の表面がサラサラになるのでさっぱりしていて革にとても健康的なことを施した気分になります。ただ塗った後の艶が継続力がなく一日経つと曇ってしまいます、またCOLONILLを塗った後だとサラサラになってしまうが故に鏡面磨きがとてもしにくいのです。なぜか水も浸透しやすくなってしまうので水に弱い靴になってしまいます。Brift Hとして作りたいのはこの両者の中間のバランスの取れたクリームだとずっと考えていました。
そこでまずはこのふたつのクリームの良いとこ取りをして作ってください!と社長にふたつのクリームを渡したところからスタートしました。今考えると本当に雑な頼み方だったなと反省。。。化学などわからない自分からすると使用感と革への反応でしか見極めることができないのでそんな頼み方になりました。
最初のサンプルが出来るまで2、3ヶ月かかったと思いますが、一作目のクリームはハンドクリームのような少し油分を強く感じる使用感でした。靴に塗ると良い感じで伸びて浸透も良かったのですが塗った後に少しベトつきが残るのが気になりました。なのでこのベトつきがないように調合して欲しいとリクエストをして二作目のクリームができました。ただまだベトつきが残る。。。これを何度も何度も試作を重ね、結局2年半ほどかかってベトつきがないけど革によく浸透して光沢も出ると言う今のクリームが完成しました。
まずこのクリームを塗ってびっくりしたのが革への浸透と保湿力です。当時履いていた自分の靴がクラックが入りそうな状態だったのですが、このサンプルだったクリームを塗るとみるみるうちに革がふっくらしてきてクラックが薄くなりシワも浅くなったのです。これはすごいクリームができてしまったかもしれない。と衝撃で震えました。。。
「社長!これならいけます!すんごいのができましたね!」と興奮して言ったのを覚えています。ずっとどんな成分で構成されているかは非公表で試作品を使ってきたのですが、完成したからには教えて欲しいとお願いして成分表を開示してもらいました。
するとこのクリームには28種類の原材料が使われていました。わかりやすいところですと“シアバター”、“スクワラン”、“カルナバ”、“ホホバ油”など、いわゆる美肌のために必要な成分が贅沢に配合されていました。化粧品会社の方に言わせると靴クリームなのであまり高くできませんがこの成分の化粧品だと多分3倍の値段くらいになりますよ。って言われました。それくらいお肌に塗るための贅沢な原料を使っているのです。だからこそのこの品質なのです。
ちなみにこちらの化粧品会社については明記できませんが普段はオーガニック化粧品をメインで作っている会社です。THE CREAMもオーガニックと呼んで良いスペックなのですが、“オーガニック”と謳うと色々とややこしいと言うのがありましてそれを売りにはしていません。でも実際はオーガニック化粧品スペックなのでみなさん是非安心して素手にとってクリームを塗ってください。素手でクリームを塗るというのを世の中に広めるためにも化粧品会社で製作した価値があるってもんです。
なので声を大にして言いたいのは、世の中色々な靴クリームがあれど化粧品会社が作っている本気の靴クリームはTHE CREAMだけです!とぜひ知っていただければと思います。似たような使い心地のクリームも最近は増えていますが中身が全く違いますのでぜひ愛靴に塗ってあげてください。クリームは僕らで言うご飯。食べ物なので何を食べているかで寿命も変わります。ぜひ最高のご飯(クリーム)を食べさせてください。
THE CREAMの瓶やデザインについてや、染料のみで色付けをしている点などこだわりが沢山あるのでまたそれは別の機会でご紹介させてください。梅雨の時こそ靴をお手入れをする時期。ぜひご自宅で靴磨きをやっていきましょう!