「靴磨き職人探訪記」 part5 Mr,Jun Iizuka(JOURNEY)

シリーズでお届けする「靴磨き職人探訪記」。世の中にはたくさんの素敵な靴磨き職人がいる!第5回は長野県松本市で若き才能を炸裂させている「JOURNEY」の飯塚淳さんをお尋ねします。

靴磨きだけにとどまらず靴専門アプリまで立ち上げてしまった若き靴磨き職人はなぜ靴磨きをはじめたのか、深く話を聞きましたのでぜひお楽しみください!

・靴磨きをはじめたキッカケはなんですか?

キッカケですか、そうですね、もともと学生時代からスニーカーが大好きでそのころからなんとなく足元は綺麗にしておくべきだという想いがあって磨いていたんです。そこから社会人になって革靴を履くようになって24歳の時(社会人2年目)でオールデンを買ったんですよ、当時静岡在住だったんで鈍行で東京のラコタハウスにVチップを買いに行きました。

スニーカーから一気に値段があがるじゃないですか、それで靴をより大切にしようと思って靴磨きの事を調べていたんです。YOUTUBEで“靴磨き”を調べていたら長谷川さんの動画を最初に見つけたんです。(今から5年前、2018年のとき)そんな感じで靴磨きは自分のオールデンの靴を磨くところからはじまりました。

そこから革靴にはまり、そのあとスコッチグレインを何足か買っていき営業職だったので自分の足元が綺麗だと気持ち良いなという満足感を感じながらいました。そんな中で若手サラリーマン特有の将来このままで良いのかという不安を感じ始めた時期でもありました。

昔から「なにか自分はやるんだろうな」と思っていた。そういう想いがありつつ、それがずっと見つからなかったのも積み重なった時期かもしれません。でもそこにまだ革靴と靴磨きは当てはまっていなかったんです。

本格的に靴磨きが仕事にしようと思ったキッカケは、長谷川さんがスルガ銀行でやっている講演会を見たのがキッカケでした。Brift Hに行く前で勇気がなかったので先にその講演会を聴きに行きました。

タイミングで言うと会社の営業のキャンペーンがあって自分の目標だった入賞が叶えられた後の燃え尽き症候群状態の頃で、そういうのもあり講演を聞くキッカケにもなりました。それでもまだ靴磨き職人になりたいというのは20%くらいでした。

その年の1月に静岡のY’S SHOESHINEの杉村さんのお店に行きました。当時は静岡に住んでいたので地元で活躍されているというのも含め靴磨きを見てみたくて。そのあとに同じ静岡の丸屋の渡辺さんのところにも行きました。そしてその翌月Brift Hにも行き、名古屋のGAKU+の佐藤岳さんの所にも行きました。色んな職人さんに会って徐々に心が固まってきました。

色々な事が沢山あったんですけど一番はコロナですね。靴磨き職人に向けて動き出したのが2020年コロナが流行りだしたころで、緊急事態宣言が出て沢山時間が出来たんです。その時にきっと人生でこんなに時間があるのって最後だろうなと思いました。

何か今できることをやらないと!と思い、その時にインスタで100足無料で靴磨きをやりますって発表して友人とかの知人の靴を磨くのをはじめたり、ブログで靴磨きの事書いていたり、三日坊主で終わりましたけどね(笑)気づけば流れるに乗るように靴磨き職人への道に進んでいました。

そのあとに長野県に転勤になったのがキッカケで今の松本の地でお店を開く出会いもありました。毎日何かが起きて背中を押されるような感覚がありながらも正直当時はすごい迷っていました。そんな時に岡本太郎の“自分の中に毒を持て”を読んで個人事業主への怖さもなくせた。

そして少し脱線しますが学生の頃からNBAが大好きで、元NBA選手のコービーブライアントが亡くなってしまったタイミングでもありました。あんなに偉大なスーパースターがこんなに突然死んじゃうんだと思って、こんな自分が迷っている場合じゃないっていう風に思いました。言い方は悪いかもしれませんが、コロナにたくさんのチャンスをもらいました。

ちなみに今の店舗は前職の地方総合商社の勤務時代に知り合った方が元々営んでいた靴修理店です。「僕靴好きなんです」なんていう話をしていたんですが、その時にはもう閉業してしまっていました。まだ物件だけはある状態だったので自分からお店をやらせてくださいとお願いしていまのお店になりました。

そんなときにドラマチックな事が起きました。今のお店を内見した翌日にふと信号待ちした時、二重の虹が架かっていて虹のかけ橋の終わりが丁度昨日内見したお店だったんです!もうこれは運命なんだなと思いそれで完全に決心しました。

・飯塚さんが作ったKutsuRecoアプリについて

はじめたきっかけは大学のチームメイトの友人で、エンジニアをやっていた彼が革靴を好きになってそこからアプリ作ろうかとなり、大阪にいる友人とオンラインでミーティングを重ねて作りました。靴のアプリはいままでにないなと思い、誰もやったことがないことをやってみたかったんです。

僕自身は革靴好きとしての意見だったり、画像の作成、プロジェクトを進めていく役割を担っています。このアプリを活用していつ磨いたか、いつ履いたかを確認できるようにすることで靴磨きの工程の一環として認識してもらいたかったんです。靴磨きをしたら最後に写真を撮って靴レコに入れる。そんな流れになるアプリとして作りました。

ラッコの可愛いキャラクターなんですがレッコグッズも展開していきたいですね(笑)ゆくゆくは無料でダウンロードできるアプリが良いな~と思っていたので、靴クリームメーカーさんなどとタイアップしてたくさんの人に使ってもらい裾の尾広げていきたいです。

・飯塚さんにとって靴磨きの魅力は?

靴磨きという行為の魅力は掃除と一緒に綺麗になるっていうのが純粋に気持ち良いですよね。お客様が「もう使えない」と思っていた靴を甦らせて喜ぶ姿を見るのはとても嬉しいです。そして靴磨きを通してお客様と色んなお話が出来るのがとても楽しいです。

革靴好きの方ってその他にも色んなことにこだわっている方が多いので、靴を通して色々な対話ができるのがとても幸せだなと思います。僕にとってはお客様の声が一番の靴磨きの魅力です。

・いままでに印象的な靴やお客様はいましたか?

一番印象的だったのはこの店の最初のお客様です。女性のお客様だったんですけど、インスタの広告を見て来てくれたんです。地元の人間でも何でもない自分が始めた店なのに来てくれて本当に嬉しいなと思いました。おそらく歳は50代くらいでカントリー調のブーツを持ってきてくれました。

ご自身でもお店をやっている方で最初はサラリーマンをしながらの時でした。土日営業だけのときだったのですが、いまでもとても緊張したのを覚えていて、正直怖かったです(笑)接客業、技術職というのが初めてだったので立ち振る舞いとか見られてるんじゃないかと思って。

その他にはほぼ毎月来てくれるお客様で、山長とかBENSONやYANKO、ジャランスリワヤなど8足くらいまとめて持ってきてくれた30代後半のお客様。突然車で来て沢山靴を持ってきてくれたんですが、土地柄REGALとかそういった比較的入手がし易い靴をお履きの方が多い土地で、こんなオシャレな靴をお持ちの方もいるんだな~と。

話は少し脱線しますが、元々Brift Hで働いていて現在は長野で靴磨きをしている山岸さんとも長野連盟を組んで長野を盛り上げようという話はしてます。個人的には長野県ならではの取り組みを行っていきたいと考えています。

最近はじめたガラスのスティックなんかも長野の山を意識して“Shinshu”って命名して販売してます。青いガラスで冬や雪解けをイメージしています。春には新作も発売予定です!

・飯塚さんの靴磨きのこだわりは?

そうですね~なんていえばよ良いかな。簡単で合って欲しいっていうか。お渡しした後のケアが簡単で合って欲しいっていうのが一番です。鏡面磨きもそうなんですけど、あまり固いワックスで磨いていたりすると割れたりとかあって、それで革靴が嫌いになってしまう方とかもいらっしゃるんで、自分でやるときにやりやすい磨き方でお渡しをするというのを意識しています。

革靴の事が嫌いになってしまわないように靴磨きは“大変” “面倒なこと”という風になって欲しくないんです。革靴は素敵だし靴磨きは楽しいことなのでできるだけ分かりやすくシンプルに靴磨きを伝えるようにしています。とか言いながら好きな方にはとことん話しますけど(笑)

技術的にはワックスはあまり使わずアーティストパレット(COLUMBUS社の油性クリーム)で艶感を出して最後にワックスを使うくらい。ピカピカが好きな方にはしっかりワックスをかける。お客様には長く靴好きであって欲しいですね。

・飯塚さんのBrift H製品でおすすめは?

僕は「THE SPRAY for WATER PROOF」が好きです。個人的にもかなり使ってますし、当店は革靴だけではなくスニーカーも多いですし、老若男女いろいろな方がいらっしゃる当店ではプロ向けの製品が多いBrift H製品の中でいろんな人にもお伝えしやすいというのも良いところです。

松本はそんなに雪は積もらないので逆にちょっと残る水っぽい雪がシミの原因になるんです。そんな土地柄もありTHE SPRAYはとても需要があるんですよ。よく店頭でお客様にスプレーのかけ方など実演し、自分の履いている革靴にかけてこんなに弾くんですよ!なんてやってます(笑)

若くして靴磨きと出逢い持ち前の行動力とアイディアで靴管理アプリまで作ってしまった飯塚さん。良い意味で靴磨きにとどまらない色々なアイディアを持って靴磨き、靴修理に励む姿はこれから靴磨き職人を目指す若者や地方で靴磨き店を始めようと考えている方々の希望になるのではないでしょうか。しかもイケメンで爽やか、これからのご活躍が心から楽しみです!

観光地としても魅力たっぷりな松本市に行った際にはぜひ飯塚さんを訪ねて足元を輝かせてみてはいかがでしょうか。

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