いわき靴下ラボ アンド ファクトリー訪問記(前編)

6月から販売をスタートする”ide homme”のソックスを作っている福島県いわき市の靴下工場に潜入して来ました。そこには貴重な職人技と旧式の機械でしか作れないソックスの奥深い世界が広がっていました。

4月某日、最近惚れ込んでいる”ide homme”というソックスを作る工場が福島県いわき市にあるということで今回特別に靴下工場を見学させて頂きました。とあるご縁でide hommeの「GIZA45」という今では栽培が終了し幻の素材と言われるエジプト超長綿で出来たソックスを履かせてもらい、その素材の気持ちよさ、履きやすさ、そして丈夫さに感動してぜひBrift Hで取り扱いをしたいと思いました。

いわき市の工場で最後に残った希少な原綿を独自に紡績し、国内でも数少ない極細糸を扱える職人がいるとの話を聞きました。そんな興味深い話を聞いたらこの目で見てみたいと思い工場見学を熱望して特別に訪問だせていただきました。貴重な機会なので前後編に分けてお伝えします!


「いわき靴下ラボ アンド ファクトリー」とは

2022年12月、国内屈指の技術を持ちながらも、会社の事業転換で50年の歴史に幕を閉じた「レナウンインクス」いわき工場。そして100年以上に渡り靴下製造を手掛けながら、20年前に自社工場を閉じた靴下メーカー「ウエスト」。この2社がタッグを組み、2023年1月「いわき靴下ラボ アンド ファクトリー」が生まれました。

“ラボ アンド ファクトリー”という名には、単に生産する工場ではなく、新たなものづくりに挑戦する共創の場にしたいという想いが込められています。国内で希少となったダブルシリンダーのハイゲージ機を所有し、減りつつある職人の育成や技術継承にも力を入れています。

まず案内してくださったのはソックスの元になる糸のストック置き場。世界中から集められた色とりどりのコットンやナイロンの糸があります。色も糸の太さもたくさんの種類があり、どんなソックスを作るかで糸からチョイスをしているとの事。

そもそも考えてみたら生地になっているのを縫製して靴下にしているわけではなく、編み機で糸を編みながらソックスってできているんだなと知りました。そう考えると靴下工場ってニット工場みたいなもんですよね。

そんなストックの中でも今回のお目当て幻の素材「GIZA45」を見つけました!

今では栽培が終了し幻の素材と言われるエジプト超長綿。糸の状態で見るのはもちろん初めてですが髪の毛より細いんじゃないかっていうくらい細い糸でびっくり。他のコットンの糸も見せてもらいましたが全く別次元です。この超極細糸で編まれているからこそあの履き心地が出来るってわけですね。そんな世界中から取り寄せた糸を見せてもらったあとは実際に編み機の機械が集まる中心部に入れていただきました。

まず入って目に入ってくるのは男なら誰しもグッと来てしまう銀色のTHE KIKAI!という雰囲気の旧式の機械です。これはハイゲージ・ダブルシリンダーという編み機らしく、200本と240本の針で編み上げるからこそ髪の毛ほどの細さに紡いだ綿糸GIZA45をシルクのような上質で艶のある生地に仕上げられるとのこと。職人さんによって100分の1mm単位で編み目を調整する技術が、足にしっかりとフィットし、すっきりとしたシルエットを生み出すかなり人力な人間味あふれる旧式の機械なのです。

特に印象的だったのが機械をばらしてオーバーホールをしている最中のところでした。職人として一人前になるには一人でオーバーホールできないといけないとの事。てっきり整備担当者や修理業者に任せているのかと思いきや、職人さんたちが自分たちでオーバーホールをしているっていうのが感銘を受けました。毎回オーバーホールをすると機械の使い心地が変わるみたいでそこの微調整こそ職人の真骨頂のようです。

その隣のレーンにはイタリア製の最新式の編み機がずらっと並んでいるゾーンへ。こちらは先ほどの旧式に比べるとかなりオートメーション化されており、その場で糸を編み5分くらいで一本のソックスが完成するというとっても優秀なマシーンでした。GIZA45の超長綿はこの機械では編めないらしく、比較的カジュアルな量産品のソックスをメインで作っていました。

この2列に並んでいる編み機の花道とも言えるようなこの風景。たまりませんね。

そして何やら女性の職人さんが難しそうな工程をやっているではありませんか。話を聞くとつま先の接合部分を縫い上げる機械らしく、織の一目一目に針を差し込み一気に縫い上げる専用の機械のようです。

「長谷川さんもやってみます?」

と言われ、手先は器用だと自負があるので自信満々にやってみたら難しいのなんのって。。。何度も針を差し込んでは抜いてを繰り返し、これでバッチリだろうと思って縫い上がった写真がこちら。

全然ダメじゃ〜ん!

この一目一目に100%、ノーミスでセッティングして縫い上げないと製品にならないってどれだけ大変な工程を経て出来上がっているんですか。。。だからこそ縫い目が凸凹しないようになって、足の指先につなぎ目が当たらず気持ち良い履き心地になるんですね。これだけの糸と機械と職人技があって出来上がるソックス。なんだかそう考えると値段が安すぎるんじゃないかと心配になって来ました。このままではハイクオリティなソックスが世の中から消えてしまうのでは。。。

どうしても消耗品というイメージなので靴下にお金をかける人が少ないと思うのですが、考えてみたら高級セーターの両袖を履いているようなものです。3〜4万円のセーターの両腕と考えたら1万円くらいコスト的には掛かっているような品物だな〜と。。。すごいぜいわき靴下ラボ アンド ファクトリー!!!

次回の後編はいよいよ完成したソックスがどのようにして出荷されていくのか。そしてどんなソックスのラインナップなのか商品のご紹介も致しますので乞うご期待!