「靴磨き職人探訪記」 part20 Mr, Soshiya Fukuda(Brift H)
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シリーズでお届けする「靴磨き職人探訪記」。世の中にはたくさんの素敵な靴磨き職人がいる!第20回はBrift H青山店で活躍する福田塑詩也です。ABCマートでスニーカーを売っていた販売員が靴磨きと出会い休みの日は時間を忘れて一日中靴を磨いていたという…Brift Hイチの靴磨き好きの男の話です。
・靴磨き職人になったキッカケは?
きっかけは前職のABCマートで働いていた頃に遡ります。ABCマートってスニーカーが多いんですけど、販売担当のカテゴリーが「スポーツ」「レディース」「キッズ」「レザー」という4つに大きく分かれていて、僕が正社員になってから3年目に担当がスポーツからレザーに変わりました。
革靴に興味を持ちはじめて何を履こうかなと思った時に、自分のいた店舗で販売している革靴には興味があまり持てなかったんです。その頃からファッションは好きだったので、こだわって革靴を選びたいと思っていたのですが、色々と調べてみるとABCマートで過去に扱ったことがあるものは店頭で履いても良いというルールがあることを知りました。
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更に調べてみると、実はPARABOOTやTRICKER'Sも扱っていたということを知ったので最初にPARABOOTを買いました。ちなみにネイビー色のシャンボードでした。それがまず最初に革靴を買ったきっかけです。革靴なのでスニーカーよりも長持ちするというのは知っていたので、そこからお手入れをしようという気持ちになって、まずは道具から揃えようと思い、ハンズに行って一揃えしました。当時は全てM .MOWBRAYで、クリーナーはステインリムーバーとかを使っていました。
最初はYouTubeで靴磨きを調べ、見よう見真似でやっていたんですが、全然うまくいかないんです。そして色々なYouTubeチャンネルを見ていくにつれ、ふと道具を変えてみようと思いました。鏡面磨きが魅力的だな〜と思っていたので、まずはワックスを変えました。SAPHIRの黒缶にしてチャレンジしてみたらそれで光ったんです。そこで完全にはまっちゃんたんですよね(笑)。これは面白い!と夢中になって磨いていくと、段々と上手くなってきているという実感もあ理、気付けば靴磨きが趣味になっていました。
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趣味になってからは自分の靴だけでは足りなくなり、同僚の靴を借りて磨くようになって、休みの日は熱中しちゃって朝から夕方まで磨いているっていう生活をしていました。一日に4足位は磨いていたので、ピカピカになった靴を渡すとみんな喜んでくれて、いつしか靴磨きを仕事にしたいと思うようになりました。当時は販売員を8年やっていたんですけど特にやりたい仕事ではなかったんですが、靴磨きなら絶対続けられるという自信もありました。
そして、靴磨きの仕事ってどこかないかな〜と思って調べると、当時からBrift Hがあったんですが、いきなり飛び込むのは怖いな〜と思っていたんです。そしてずっと悩んでいた時、当時働いていた上野店の近くに”靴磨き専門店 石塚”というお店ができたんです。よくABCマートの店舗の商品移動で街を走っている時に、”靴磨き専門店 石塚”の前を走っていて、それで知って何度か利用させてもらっていました。
ある日、代表の石塚さんに一緒にやらないかと声かけられたのもあり、いよいよ靴磨きの仕事に転職しました。革靴にハマってから5年が経つくらいでした。やっとやりたいことができたという感じでしたが、そんな矢先にコロナ禍になってしまいました。お客様が少ない中でも仕事をやらせてもらっていたんですが、そこでも満足はできなかったんです。沢山磨かせて頂いてお客様も喜んでくれていたんですが、もっと靴磨きを上手くなりたい!っていう気持ちが出てきて…
そんなことを思っている時期にグッドタイミングでBrift Hの求人を見つけました。これはいくしかない!っていう気持ちで応募しました。昔と違い経験値は上がっていたので自信持って行けました。そして今に至る…という、振り返ってみるとそんな経緯で靴磨き職人になりました。
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・印象に残っているお客様はいますか?
昔の話になるのですが二人いらっしゃいます。どちらも”靴磨き専門店石塚”時代なんですけど、一人目は石塚のお店で働き出してから2、3ヶ月くらい経った時に、古っぽいけど小綺麗にしている50代くらいのおじさん二人組がきてくれました。結構な常連さんでいつも二人組でいらして順番で磨いていくという方達でした。
ある日喫茶店で石塚さんと休憩をとるためお店に入ったらそのお二人がいて、少し離れた所にこちらも座ったのですが、お二人の話が少し聞こえてきたので何となく聞いているとどうやら二人とも詐欺師だったみたいで…
「あの客からはいくらいくらいける。」なんて話をしていました。その後喫茶店を出てから「今の聞いてたか?」って石塚さんに言われて、なんだか複雑な気持ちになったのが印象に残っています。その後も何度かいらしたんですけど、それを知ってからはとても複雑な気持ちで磨いていました。というのも、この光った靴で詐欺を働いていると考えると、詐欺を手伝っている感じがしたからです。靴を人は見るものなので、自分が綺麗にした靴で人が騙されてしまうかもという罪悪感がありました。
次に二人目も石塚時代なのですが、すごい若いお客様が僕が受付に立っている時にいらっしゃって、そのまま担当して靴磨きをさせてもらいました。色々と世間話をしていたんですけど、話を聞くとその方はなんと中学生だったんです。会話の受け答えもしっかりしていて、おばあちゃんに買ってもらったというローファーを磨きに来てくれていました。
中二の男の子で今は生徒会の副会長をやっていて、夏休み明けに選挙があって生徒会長に立候補するとのことでした。おばあちゃんがしっかりした方のようで、「靴は綺麗にしなさい。」って言われ、磨き方を学ぶのも兼ねて来てくれたという次第でした。その男の子がとても印象に残ってます。今ならもう大学生とかだと思うんですけど、それ以来会っていないので生徒会長になったかも分からず今でも気になっています。
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・今までに磨いて印象に残っている靴は?
色々とあるんですけど、ユナイテッドアローズで磨いたAldenですね。お客様が少ない日だったんですが、六本木店の店長がUA別注のAldenの私物を出してくれたことがありました。買ってから初めての靴磨きだったみたいで、話を聞くとブラッシングだけでクリーナーもクリームもやっていない15年ものとのこと。
それだけでも驚いたんですけど、雨の日も雪の日も履いていたのにシミとかもなく見た目も綺麗。乾いている感じはあったんですけど磨く前からワクワクしてきちゃって(笑)。実際に磨いてみるとクリームを塗れば塗るだけグングン吸っていくし、それだけではなくなんか普通のコードバンと雰囲気が違う感じがしたんですよ。触った質感というか革の厚みが最近のAldenと違うなって思いました。
クリームだけでめちゃくちゃ光る靴でさらにSaphirの油性クリームも重ねて塗り込んだら、乾拭きだけで鏡面磨きみたいになったんですよ。いつもよりもワックスのノリも早く、これは本当にすごい革だな〜最高のコードバン触らせてもらったな〜ととても印象に残っています。
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・どんな靴を磨くのが好きですか?
元々は磨くのが苦手だったんですけど好きになってきた靴があります。プレーントウの靴なんですが、どこを鏡面仕上げの境目にするか、グラデーションがしっくりこなくて苦手意識がありました。でもカウンター磨きでプレーンを磨く回数が多かった時期があり、これはチャンスだと思ってやっていくうちに磨き方が分かってきました。ワックスの指乗せがすごい大事だなってその時に気付いたんです。
今まで指乗せは人より多めにやっていたと思うんですが、グラディーションをかけるところの回数と量感が分かってきました。それが分かってからは思い通りのグラデーションができるようになってきました。今の課題だと思っているのはシボ革の磨きですね。特に左右差がないようにすること。全体の光沢のバランスもまだまだだなと思っています。
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・福田塑詩也の靴磨きへのこだわりは?
僕が一番こだわっているのは”汚れ落とし”です。理由としては、しっかり汚れを落としきった靴はクリームがぐんぐん染み込むのがよくわかりますし、ブラッシングするとしっかり入っていく。しっかり落とすとこれだけ変わるのかと実感するのでとても重要視しています。うちのお客様は自分で磨いている方も多いので、靴にワックスが残っているのは完全に落としきります。お客様の目の前でスキンケアの話なども交えながらご説明しています。ちなみに僕はスキンケアにもこだわりがあるのでそれもあるかもしれません。
使う道具に関してはシンナーなど使わず、”THE CLEANER for Mirror shine”をメインで使って革を痛めないように気をつけながらしっかり落とします。磨きの仕上げに関してはバランスを重視しています。靴全体のバランスですね。そしてつま先の中でも先端のトップの部分が最高に輝いている状態を目指しています。それと隙間は極力無くしたいので、コバの間や革の縫い合わせた段差などの隙間までしっかり磨き上げているので、そこを一番見てもらいたいところです。AldenのUチップのモカの部分などボコボコしていて磨きムラが出やすい部分はとても気にしながら磨いています。
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・Brift H製品の中で好きな道具は?
そうですね〜ミラクリですかね。好きな理由としては革に負担がかからないのにしっかり汚れを取れる点です。僕の使い方は、最初に汚れを溶かすイメージで優しめに塗り、ワックスなどがクリーナーと馴染んで溶けてきてから力を入れて拭き取るっていう使い方です。
水性クリーナーも良いんですけど革の油分を抜き過ぎてしまうというリスクもあるので、その点ミラクリはその心配がありません。
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今回改めて福田君の話を聞いていると心から靴磨きが好きなんだな〜と伝わってきました。仕事中でもふと時間を忘れて靴磨きに集中しているなと思う時がある彼の真髄を知れたインタビューでした。業界内でも評判の高い福田磨きをぜひ興味を持った方には体験してもらいたいと思います。ぜひご指名お待ちしております。(聞き手:長谷川)
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