「靴磨き職人探訪記」 part19 Mr, Sho Kamibeppu(THE SHOESHINE AND BAR)

シリーズでお届けする「靴磨き職人探訪記」。世の中にはたくさんの素敵な靴磨き職人がいる!第19回はTHE SHOESHINE AND BAR店長 上別府生です。料理人から始まり内装業、金融業を経て靴磨き職人になった異色のキャリアを持つ男。セクシーシューシャインと呼ばれる靴磨きスタイルの裏側に迫ります。

・磨き職人になったキッカケはなんですか?

僕は社会人経験を料理人としてスタートしました。中野にあるカジュアルな個人経営のイタリア料理店の料理人として入りました。料理未経験ではありましたが元々料理が好きで10代の頃から作っていました。そこで5、6年務めて他のお店に移って料理人として腕を磨いていました。いつか自分でお店を持ちたいなっていう夢もあったのですが、ある時ずっと書き溜めてきたレシピノートを無くし、その時に他の仕事もしてみたいなと思っていたタイミングというのもあり転職をしました。

地元の友人が内装業をやっており、一緒にやらないかと誘ってくれたのでそこで3、4年くらいは内装の職人として働きました。その後にまた違う地元の友人が会社を立ち上げるので一緒にやらないかと誘われ、金融業界に転身しました。そこでは資産運用などいろいろな事を学ばせてもらいました。

こう話していると自分はやりたいなって思ったところに突き進むタイプだなと改めて思いますね(笑)。やってみないと分からないっていう性分なんですよね。

靴磨きに関しては金融業だったのもありスーツを着て仕事をしており、取引先の経営者の方々の靴がみんな綺麗だったので足元はちゃんとしないといけないんだなって思って磨き始めました。YOUTUBEの動画などで自分なりに靴磨きを勉強していて独学でやっていたのですがある時靴磨きの世界チャンピオンっていうのが日本にいるらしいということを知りました。しかも東京にあって家からも近いから行ってみようと興味を持ちました。

Brift Hを知って実際に長谷川さんに磨いてもらい、今までやっていたのと全然違うなっていう衝撃を覚えました。カウンターで磨いてもらった経験は印象的で、空間も素敵だったし所作とかも心地よく、磨き終わった後は「さあ、足元も綺麗になったし頑張るぞ!」って思えました。

その後にこの仕事で食べていけるのであれば良いなと心が躍ったんです。靴磨きを仕事にできたらいいなって。料理人や建築の仕事もそうでしたけど手を動かすのが好きだったので。それがキッカケで靴磨き職人を志すようになりました。

当時のBrift Hは職人の募集はしていなかったですが、磨いてもらった3日後には履歴書を持ってお店に行きました。シフトを見て長谷川さんがいる日に待ち伏せして渡したんです(笑)。ちょうど今一人職人を探しているんだよねっていうタイミングもあり面接を受けることになりました。入ってからは厳しい先輩にしごかれて大変でしたが踏ん張ってやっていました。

僕が入社した後に新しいメンバーが入ってきてそこで仲間が増えたことで雰囲気が変わり、みんなで頑張ろうとなり、厳しい指導もなんとか乗り越えてきました。特に定休日はみんな和気藹々としつつも黙々と仕事を進めてく先輩たちがどんどん磨きを進めていくのはすごいなと思いました。僕はまだその頃しゃべる余裕もなかったですね(笑)。

仕上がったのをチェックしてもらうのですが、その時に靴磨きって光らせる方に目が行きがちでしたが大事なのはそこではないっていうのをその時に学びました。そこまでたどり着くのも大変でした。。。

入社して間もなく長谷川さんの密着取材が入り、「NHK”プロフェッショナル〜仕事の流儀〜”」ではカウンター試験真っ盛り(Brift Hではデビューする前にカウンター磨きの試験を行います。)の大変な時期に撮影が入って、急に僕も密着され出して正直邪魔臭いなと思ってました(笑)。テレビも出たくないなって思っていたのですが、でもNHKの大森ディレクターが熱入ってきちゃってラインとか交換して、頑張ってください!っていう連絡とかももらって、頑張ってるんだけどな〜。とか思いながら撮影をされてました。。。

カウンター試験中もカメラが入ってカウンターの中も撮影していたので、腕がカメラに当たっていたりして集中できないなとも思ってました。なんだか良い思い出がありません(笑)。放送後は周りの人やお客様から見たよ〜って言ってもらえてとてもありがたかったのですが、当時のテレビ越しの印象としては「真面目に頑張っている人」って感じで、今の僕と雰囲気が違うのは大丈夫なのかなんて思いますね(笑)。

現在、靴磨き職人としては5年4ヶ月のキャリアになります。

・靴磨きのこだわりを教えてください。

目の前で磨くというのがあるので、仕上がりまでの工程を楽しんでもらうという事です。そして所作は特に気をつけています。気持ちよく見てもらうために無駄なくスムーズに美しく動くように心がけています。動きにメリハリをつけて、ゆっくりの時はゆっくり動き、時にスピードをつけてブラッシングをしたりと緩急をつけています。特に水研ぎの時は注目してもらいたいタイミングなのでよりダイナミックに素早く丁寧に動いて仕上げます。

また仕上がりに関してはコバは強めに光らせてます。やっぱりつま先と踵だけではなくサイドの輝きをしっかり繋げて、横から見た時の輝きを特に意識しています。栄養補給はクリームはしっかり浸透するように意識し、指塗りで革の質感を感じながら揉み込むようにセクシーに磨いています。そこは強く意識しています。モミモミ。

・印象に残っている靴やお客様について。

Kさんというお客様で、半年に一度程の利用なのですが「久々に話に来ました」と言って来てくださるのがとても嬉しいですね。僕のお客様はそういう方が多いのは一つ特徴だと思ってますし、僕のカウンター磨きのスタイルはそう在りたいと思ってます。僕がかれこれ7年程通っているバーバーがあるのですが、正しく同じような感じかなと。仕上がりがバッチリなのはもう分かってるので、他愛もない話をしながら過ごして気持ちよく帰るという。これからも良い距離感で楽しんでいただけるお客様を増やしていけるよう技術も人間力も鍛えていきます。

あと印象に残っている磨きで言いますと、初めてのカウンターデビューの靴は印象に残っています。ALDENとクロムハーツのモンクストラップの靴で”すごいの来ちゃったな”ってかなり衝撃的でした。カウンターに立つ時にどんな靴でも来い!とは思っていましたが想定以上の靴がきたんで(笑)。磨いている時は金具にかなり気を遣いながら磨きました。注意を払って磨いたのもあり、いい磨きが出来て無事にお客様も喜んでくれました。今もですがお客様が喜んでもらえるのが何よりも嬉しいですね。

・現在店長を務めている虎ノ門にあるTHE SHOESHINE &BARの魅力について教えてください。

虎ノ門店の一番の特徴はBAR併設の店舗なので、美味しいお酒が飲めるというの最大の魅力です。お客様も靴をつまみにお酒を飲んでおしゃべりして楽しんでくださっているな〜と日々感じています。僕もお酒は大好きで楽しさも分かるので、この店にいるからこそ出る話題もあったりしますし、僕はとても楽しんでいます。青山本店に行っていたお客様でもこっちの方がゆったりできるっていう方も多く、早く来ても終わった後もお酒飲んでまだいれるお店なのでゆっくりできると言ってくれます。

また、”シューズカクテル”というシューメーカーをイメージしたオリジナルカクテルもありまして、まさしくTHE SHOESHINE & BARらしいメニューです。John Lobbという名のカクテルを飲みながらJohn Lobbを磨くなんて粋じゃないですか。靴磨きと一緒に楽しんでもらいたいですし、普段カクテル飲まない方でも良いきっかけになるんじゃないかなって思います。

靴磨きする際にじゃあ一杯飲んでみようかなってなる方も多くて、「こんなに美味しいカクテル初めて呑みました。」って言ってくださる方も多いのでとても嬉しいですね。実はバーテンダーを務めているKENGOさんはこの道30年以上のベテランで名だたるバーで修行した方なのですんごい腕前なんです。片手間でやっているバーではないのでぜひみなさんにはカクテルを楽しんでいただきたいです。

このお店をきっかけに気軽に頼める靴磨きとの出会いの場になって、広まって楽しんでもらえたら良いなって思います。

・Brift H製品で好きな靴磨き道具は?

THE CREAMですかね。特に万能に使える無色です。どんな靴にでも使えますし、靴磨き職人としてハンドクリームがわりにも使えちゃうっていう(笑)。つい自分の手に塗っちゃいますね。冬場とか乾燥している時は特にオススメです。

自分の興味や好きにこだわり自由に生きてきた男、その彼が選んだ靴磨き職人という職業でこれからどんなことを叶えていくのか。映画が好きでお酒も好きで博識な彼が生み出す靴磨き空間はBrift Hの中でも特別な空間です。ぜひご興味持たれた方は一杯呑みながらセクシーシューシャインをご体験頂けたら幸いです。

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