江戸屋ブラシ 物作りのこだわり
長らくBrift Hのブラシ制作担当をしてくださっている福原さんをお招きして、虎ノ門ヒルズにある店舗“THE SHOESHINE AND BAR”にて「江戸屋ナイト」を開催いたしました。江戸屋ブラシ作りのこだわりや制作秘話についてたっぷり聴かせていただきましたのでご紹介いたします。
江戸屋は享保3年(1718年)創業なので今年で305年という老舗の刷毛、ブラシ会社です。元々は江戸時代に将軍家御用達の刷毛師として始まり、近代化の流れとともに明治からブラシが西洋より入ってきて刷毛以外のブラシの制作も手掛けるようになりました。
現在も創業の地である日本橋大伝馬町(駅は小伝馬町駅)にお店を構え、日本のみならず世界中から高品質のブラシを求めて訪ねてくる人気店として営まれています。
そんな江戸屋にBrift Hブラシを作っていただくきっかけは今から16年前のBrift H開業前、当時23歳の何処の馬の骨かも分からない若者であった長谷川が江戸屋の門を叩いたところから始まりました。Brift Hを開業するにあたり自信を持って最高品質と言えるブラシを作るために色々なブラシ屋さんを探していたところ辿り着いたのが江戸屋だったのです。
アポもなしに突然訪問し、自分が出た雑誌や新聞をカバンいっぱいに詰めて、Brift Hの事業計画資料も出して必死にお店の構想をお話しして、最高のブラシを作って欲しいと話をしました。今考えてみるとなんとも迷惑な世間知らずの若者でお恥ずかしい限り。。。
その際に丁寧にご対応頂きそんな若者の話を熱心に聞いてくださったのが福原さんだったんです。そこから何度も打ち合わせを重ねてオリジナルの新ブラシの開発も含め、Brift H開店の際には江戸屋製のBrift Hのブラシを並べることができました。
元々は夏の閑散期に職人の手を空けないために作っていたという靴ブラシ。それが今や一番の売れ筋商品となりました。その背景には僕ら靴磨き職人が使うにあたってプロのハードな使用に耐えられるよう仕様を何度も変更し、常にアップデートをしてきた弛まぬ努力があります。
江戸屋ブラシの特徴は職人が一つ一つ手で毛を植えていく“手植え”という製法を用いています。毛の束を職人の手の感覚で掴み、V字に曲げてテグスで一束一束ブラシの穴に植え込んでいきます。その際に力強く植えること、毛量が最適であることがとても大切です。
その工程をBrift H別注では鉄線に変更し、より抜け毛がないよう強力に植え込んで頂いています。ナイロン線と違い下手をすると手が切れてしまう危険な方法なのでこれができる職人は1人だけだと言います。
そしてそれに加え、より強化するために福原さんが注射器で水で溶いた木工用ボンドを一穴一穴に注入して毛元を固めてくれています。一度注入後に乾燥、また翌日二度目の注入をするという手のかかる工程をしてくださっています。そのおかげで我々が毎日数十足も磨いても何年も使用できる丈夫なブラシになっているのです。
最後に特筆すべきが福原さんによる検品です。一本を約20分ほどかけて鉄製の櫛を使ってブラシを梳かしていきます。何度何度も梳かすことで切れ毛やきちんと植っていない毛が飛び出してきます。
それを丁寧に抜き取りとカットを行います。だから江戸屋ブラシは使い始めから毛が落ちなくて気持ち良く使い始められるのです。とても納得しました。無心になって検品をし続ける福原さんと想像すると頭が下がります。。。
一本のブラシを完成させるのにこういった多くの工程があるために毎月数十本の納品しかできないのです。大体毎月馬毛ブラシ、豚毛ブラシ、山羊毛ブラシ合わせて40〜50本ほど完成するのがやっとという量です。
それを毎月1日の12時からBrift H公式通販サイトで販売させて頂いており、全国の皆様にお届けできるようにと現在は通販のみでの販売にしています。ですが、たくさんのお客様に「なかなか買えない」「月初は忙しいから難しい」などのお声を頂いているので5月より販売日を増やします!
【5月より改訂】毎月1日、15日の12時〜 発売となります!
チャンスは二度に増えますが販売できる在庫は増やせません、、、そこはご容赦くださいませ。今まで月初だと買いにくかったお客様にはぜひ15日の販売日にご利用いただけたら幸いです。
靴磨きライフを快適に楽しむには良い道具は必須です。僕ら靴磨き職人にとっても道具がなくては靴を輝かすことはできません。素晴らしい道具があるからこそ技術に集中して多くの靴を磨けるのです。
仕事で毎日ハードに使っている僕らでも江戸屋ブラシは毛が擦り減るまで一本を10年くらい使い込みます。そう考えると家で趣味として使うみなさんはきっと一生使えるかと思います。
ぜひ世界最高峰の靴ブラシを手に入れてみるのはいかがでしょうか。