World Championships of Shoe Shining 2025

ロンドンで開催された靴磨きの世界一決定戦「World Championships of Shoe Shining 2025」。Brift Hの新井田隆が出場し、見事優勝。国内大会に続く快挙で、日本人初の“二冠”に輝きました。匠の技と情熱が世界を魅了した瞬間です。

ロンドンで毎年開催される「World Champions of Shoe Shining」。世界一の靴磨き職人を決めるこの大会は、2017年に始まり、今年で第7回目を迎えました。

これまでの優勝者は日本人が4名、シンガポール人が2名と、アジア勢が圧倒的な強さを見せてきたこの大会。今年は、Brift Hから新井田隆がファイナリストに選出され、出場を果たしました。新井田は2023年・2024年と日本の靴磨き大会で連覇しており、まさに満を持しての世界挑戦となります。

この大会は「Super Trunk Show」という国際的な革靴の展示会イベント内で開催されており、靴磨き競技のほかにも、靴を染める技術を競うパティーヌ大会や、靴づくりの頂点を競う「World Championships of Shoemaking」なども行われます。

今年のファイナリストに選ばれたのは、新井田のほかに、福岡のBoston & Re Oldsから吉冨純弘さん、そして軍隊での靴磨き経験を持つイギリス人のマシューさんの計3名。この3人によって、2025年の世界一が争われました。

競技ルールはシンプルです。20分間という制限時間の中で、新品の靴の片足を磨き上げます。使用できる道具はSaphir社製の製品に限られ、持ち込みが許されているのは布とブラシのみ。大会の司会・運営は、スウェーデン人のイエスペル氏が務めています。

そして私、長谷川も審査員として初参加させていただきました。ロシア大会での審査経験はあるものの、世界大会という大舞台は初めてで、身の引き締まる思いでした。審査員は私を含め6名で、他の5名は「Super Trunk Show」の協賛企業から選ばれた代表者たちです。

競技は2025年5月10日15時(日本時間23時)にスタートしました。序盤から各選手はスピーディーにクリームとワックスを塗布していきます。日本では一般的となっている素手でのワックス塗布は、海外では珍しい手法ですが、イギリスのマシューさんはその方法を取り入れていました。

開始7分を過ぎた頃、新井田はソールにもワックスを施し、いち早く布による磨きへと移行。吉冨さんとマシューさんは引き続きベースワックスの工程を進め、12分を過ぎたあたりで吉冨さんも布での仕上げに移りました。

終盤にかけて、各選手の靴は力強い光沢を放ち始め、遠目には優劣の判断が難しいほどに。しかし、新井田の靴だけはソール部分の輝きが群を抜いており、明らかな違いを見せていました。

ソールまで磨き上げるのは非常に珍しい手法で、ヨーロッパの一部の職人の中にはその技術を持つ者もいますが、大会の場で実践するのは前例がなく、まさに革新的なアプローチでした。

20分間の競技が終わると、審査員が選手たちの前で磨き上げられた靴をチェック。その後、別室にて最終的な審査が行われます。

審査は光沢の強さで吉冨さん、ソールの美しさと全体のバランスで新井田が高評価を受け、意見は二分。マシューさんは途中で何らかのミスがあったのか、つま先の輝きが不足しており、残念ながら上位には届きませんでした。

審査中、「Yuyaの意見はどうか?」と尋ねられた際、私は「自分が顧客だったら、どの靴を受け取ったときに嬉しいか」という観点で総評をしました。

結果、2025年のチャンピオンは新井田隆に決定。日本大会2連覇に続き、世界大会でも優勝を果たし、日本人として初の「国内・世界二冠」を達成しました。

Brift Hとしても、2017年の長谷川裕也、2023年の林田直樹、そして2025年の新井田隆と、3名の世界チャンピオンを輩出する快挙となりました。これもひとえに、日頃から支えてくださる皆さまのおかげです。心より感謝申し上げます。

私たちBrift Hは、これに満足することなく、さらに技術を磨き、世界中の足元に新たな価値を届けられるよう、今後も精進してまいります。